衝動的ですら

オーストラリアにバイロンベイという土地があります。
あの場所のことを思い出すだけで
向こうの気候のように体が暖かくなって、あかるい景色が広がります。
流れ続ける時間が、淀みもせず、ただ素直にゆっくりと溶けて広がっていきます。
人たちも、その時間と一緒に流れて、やってきては旅立っていきます。
ただ、ただ、それだけ。
それだけのことに、今でもどうしようもなく焦がれてしまいます。
ビーチを経由して灯台まで、裸足でアスファルトの上を歩いて、足の裏やけどして。
鯨が遠くで潮を吹く。そんな景色を双眼鏡で眺める人たちを眺めながら
灯台の横の芝生に寝っ転がって、生涯で空の青の割合が一番高い高い空を見上げる。
夜は、プールの水が循環する音を聞きながら、廊下のベンチに座ってじっくりと時間をすりつぶす。
時折、お酒を飲んで語らう人たちの言葉が聞こえる。目の前を通り過ぎる人が囁きかけてくる。


ああー、もう胸の奥で、膨れあがって仕方ない。
向こうで知り合って、ずっと連絡を取っていなかった友達に電話をしました。
一人は、留守番電話に繋がったので吹き込んでおきました。
「どうしてる?」そんな一言。
もう一人は、メールが不通になってました。
残念だったけど、きっと生きてると思います。どこかで会わないかなあ。


駆り立てたのは、なんだろう。
自分の今いる座標軸の緩さ。浮遊感。
忘れちゃいけない、と思い出したように叫ぶだけでも。