東京のタワー。

明け方にふと東京タワーを探しに行こうと決めた。
山手線を振り子のように乗り過ごして降り立った新橋駅。
見えないタワーのその匂いだけを頼りに歩いたら
ずいぶん遠回りしてしまった。


ふと目に入った案内板に、日比谷公園の文字。
誘われるままに入園。
噴水。イチョウ並木。鮮やかな落ち葉の絨毯。
こどもたちの笑い声。公園のブランコ
大人たちの返す笑顔。
どこを切りとっても、
日々の慌しい生活が嘘のよう。
くすんだ天気もなんだか気持ちよくて、
ぼんやり眺めてしまう。


危うく眠りに落ちてしまいそうなところで
正気をとりもどして、再び匂いを頼りに歩く。
そうしたら、ビルの間から覘いた赤い三角錐
思わず感嘆。やっぱりかっこいい。
あれだけ全ての風景に溶け込んでしまう
造形物もないだろう。
逆方向に歩いていたことにも、妙に納得して
あとはひたすらタワーの指す方に向かって歩く。

歩く

歩く
ようやく辿りついた。
これはもう、中に入るなんて罰が当たる。
とりあえず脳内でくるりの「東京」ギターリフを再生。
見上げてはまぶしさで目の奥のくすぐったさに耐え切れず
視線を水平に戻す、小一時間ほどそれを繰り返した。
なんだか熱いお茶、飲んでるみたいだったな。
ちなみに、一人で来る人とかあんまり居ないみたい。
家族とか、恋人とか、観光バスとか、
そういう人たちばかりでえもいわれぬ遊離感。


ひとしきり時間をすり潰した後、
ふと立ち上がって人たちの帰り道をなぞる。
向かう先はJRの浜松町駅
あ、スタートから間違ってたんですね。
あの時も新橋で降りなきゃ良かった。
何度も振り返って見上げるタワーは
それはもう、完成された黄昏を呈してました。
今度は、夜の光を見たい。
夜空に光る月の方向を探してしまうより先に、
僕は、東京タワーを探すんだろうな。


夜は下北沢ガレージへ。
センチラインというバンドの企画、tasogare night。
10月の企画で繋がった方と現地で落ち合って、
入場をしてみたのです。
初めてのバンドばかりなので緊張していたら
偶然、やぎお兄さんに遭遇して
テンションがあがったのでありました。
今日のテーマは、メロディ。あと声でしたね。


「響く」と「響かない」
その境界線については、
いつもながら考えさせられた日でした。
僕はとりあえず、
黄昏かげんなら負けてない、
とか思ったのだけれど。
でも楽しかった。飛び込んでみてよかった。


音楽を言葉で表現しようとするのって
本当に難しいことだと思う。
それでも、一生懸命に伝えようとしてる、
その姿がとても素敵だと思いました。


夜行バスに飛び乗って、名古屋についたのが午前五時。
始発待ちなんて素敵なことをしながら、
はやく布団に入って少しだけ眠りたいって
思ってたんでした。