キセツハズレ

夏の終わりを告げるヒグラシの音を聞きながら
夕焼けに染まる景色に溺れたい。


何も失いたくないと、
両手を広げたその瞬間から
みるみる零れ落ちていく。
記憶も言葉も、声も色も全部。


幾重にも重ねた歯車が
それぞれの周期を刻んでる。
気がつけばまたこの季節で、
まどろみの中で鳴る目覚まし時計みたいに
遠く、しかし鈍く疼く。