フィアドロップ

不意にすとん
とすべりこむ隙間。


たしかさっきまで身に纏っていたはずの
心地良さが剥ぎ取られて
夢から覚めるみたいに、
でも現実から、現実へ。


だからといって別に世界は何も変わらない。
僕の意識のアンテナが気まぐれで、
チャンネルとチャンネルの間のノイズを拾う、
ただそれだけのはなし。


電源オフのスイッチが無くて、
ボリュームも上手に調整出来なくて、
仕方なくただそれをざあざあと流し続ける。


遠くの景色はゆっくりと、
近くの景色は一瞬で、
右から左へ流れてゆく。
窓にはきれいなガラスがはめ込まれて
手を伸ばす指先が空をなぞる。


雪融けを誘う陽光を集めて
燃え尽きるような一瞬を描きたい。




僕のうたには誰も居ないのかもしれないな。

僕も、君も、あと猫も
きっとぜんぶおなじ、僕自身だ。